今回は、永久歯列で矯正のご相談をいただいた方です。
初回来院時のお悩みは、前歯の翼状捻転(よくじょうねんてん)とかみ合わせが気になるというご相談でした。「歯の生え方が逆ハの字になっている」「歯が縦向きに生えている」「歯が斜めに生えている」という表現を使われる方も多いように、翼状捻転は、歯がねじれて生えている状態です。
この歯のねじれだけを解消すれば、歯並びがきれいに配列され、患者さんのお悩みは解消されるのか?というと、実はそうではなく、奥歯のかみ合わせも乱れている場合もあり、かみ合わせのズレによって、顎が痛む、頭痛がするといった「歯並び以外」のお悩みが隠れていることがあります。
また、前歯が翼状捻転歯の場合、歯並びの問題だけでなく、日常生活での悩みの種は食事です。
前歯で噛み切るという行為ができない分、他の歯で前歯の役割を果たす必要があるため、顔を傾けながら食べなければいけなかったり、食事中は周りの目を気にして、思うように楽しめないということもあります。(食事を楽しめるようになりたいというお気持ち、痛いほどわかります。)
この方は、目立たない矯正装置での治療をご希望でしたので、奥歯を1本抜歯し、マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置を使用し、約1年7ヶ月の年月をかけて歯並びを改善しました。
矯正治療後、配列した歯並びをみて、「今までは、前歯が気になって食べ物をうまく噛み切ることができなかったので、これからは、思いっきりトウモロコシをかじれますね!」と笑ってお話をしてくださいました。これからは好きな野菜や食事を思う存分楽しみながら過ごされているといいなと心から思います。
●主訴
前歯の生え方が縦向きでねじれている。かみ合わせが悪く食事が楽しめない。
●診断名あるいは主な症状
上顎前歯翼状捻転
上顎・下顎叢生
●年齢
28歳1ヶ月
●治療に用いた主な装置
マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置
●抜歯部位
上下の左奥歯(第三臼歯)を抜歯
●治療期間
1年7ヶ月
●メンテナンス頻度
月1回
●治療費用(税抜)
約800,000円(2018年7月時点)
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について(改訂)
日本矯正歯科専門医機関の規定により、当院では矯正治療を行う上で、リスクや副作用を明示しています。
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いですが個人差があります。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性がありますが、その場合には改めて治療期間のスケジュール作成等をいたします。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響することがあります。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。程度によっては、虫歯治療を優先します。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。その場合には装置の変更等を行います。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。保定装置とは>>
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。