奥歯はしっかりと噛んでいるのに、前歯が当たらない状態を開咬(かいこう)と言います。
開咬の方は、意識して口を閉じないと唇を閉じるのが難しく、多くは開きがちになります。無意識に口をポカーンとあけている状態になっているという方も開咬の方に多いです。唇が開いている時間が長いと、ドライマウス状態になり、唾液の分泌量が減ってしまいます。口の中が乾燥すると、口腔内に細菌が増殖しやすくなり、虫歯や歯周病、口臭の原因にもなります。
開咬の原因は遺伝によるものもありますが、指しゃぶりのクセもその1つと言われています。舌の癖(正しい位置に舌がおけていなかったり、食べ物や飲み物を飲む時に押し出す癖など)も関係しているので、子どもの頃、指しゃぶりの期間が長かったという方は、舌癖のトレーニングも必要になる場合もあります。
今回は、重度の開咬治療例をご紹介します。
●主訴
奥歯をしっかり歯を噛んでいても、前歯が当たらず閉じれない状態。前歯で麺類を噛み切れず、舌を使っている。前歯の隙間があるため発音がしづらい。
●診断名あるいは主な症状
開咬
●年齢
26歳10ヶ月
●治療に用いた主な装置
セルフライゲーション型セラミックブラケット装置(デーモンクリア)
●抜歯部位
上4番目の歯を2本抜歯
●治療期間
2年6ヶ月
●メンテナンス頻度
月1回
●治療費用(税抜)
約800,000円(2020年6月時点)
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について(改訂)
日本矯正歯科専門医機関の規定により、当院では矯正治療を行う上で、リスクや副作用を明示しています。
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いですが個人差があります。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性がありますが、その場合には改めて治療期間のスケジュール作成等をいたします。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響することがあります。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。程度によっては、虫歯治療を優先します。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。その場合には装置の変更等を行います。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。保定装置とは>>
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。