セルフライゲーションブラケット(デーモンシステム)とは
従来のブラケット矯正は、「矯正」と聞いて一般的にイメージされる、ワイヤーを使用した治療方法です。『ブラケット』という装置を専用の接着剤で歯に貼り付け、ブラケットに矯正用ワイヤーを装着し、ワイヤーの力を利用して少しずつ歯を移動させています。ゴムや細い針金でブラケットとワイヤーをくくること(結紮(けっさつ))により、大きな摩擦が生じ、この摩擦力が歯の移動には大きな障害になってしまいます。
歯を動かすにはこの摩擦力に勝る強い力が必要になるため、痛みが出やすく、歯が動きにくい傾向がありました。
一方、セルフライゲーションブラケットでは、ブラケット本体に結紮用のシャッターやクリップがついており、ゴムや針金での結紮が必要ではなくなっています。セルフ(=自分自身)ライゲーション(=結紮)というわけです。
セルフライゲーションブラケットではゴムや針金で結紮しないため、ブラケットとワイヤー間に大きな摩擦力が生じません。そのため、歯の動きがスムーズです。そのため、場合によっては、治療期間を短縮することができます。また小さい矯正力で少しずつ歯を動かすことができるので、痛みを生じさせる割合を減らすことができると言われているのも1つの特徴です。
痛みの軽減と治療期間の短縮に優れていることから、歯のでこぼこが強く、痛みが心配、そんな患者さんにぜひ、知っていただきたいブラケットです。
言葉だと伝わりづらい部分もあるかと思いますので、動画を2つご紹介します。
※動画はメタルブラケット(シルバー)ですが、当院で使用しているものは、セラミック(白色)なので、目立ちにくいです。
▼セルフライゲーションブラケットの動画▼
▼デーモンシステムの動画▼
セルフライゲーションブラケット装置の特徴
・矯正中の歯の痛みが少なく、歯が動きやすい傾向にある
・歯磨きがしやすく、清掃性・衛生的に優れている
・歯を抜かなくて済む可能性が高くなる
・ワイヤーの着脱が簡便なため、1回の診療時間が短縮できる傾向である
摩擦が少なく、歯が動きやすい
矯正治療の大きな欠点は、調整後数日間は、患者さんに痛みを我慢していただく必要があることでした。
これまでのブラケット装置では、歯を動かすワイヤーをゴムのリングや金属製の細いワイヤーを使用して、ブラケットに押し付けるように結ぶことにより力がかかるようにできていました。この押し付ける力によって摩擦力がかかり、歯が動きにくく、動かすには大きな力が必要で、痛みが強く出やすかったのです。
それに対し、セルフライゲーションブラケット装置は、ワイヤーをブラケットに押し付ける力がほとんどかからず、弱い力で歯を動かすことが可能です。そのため、歯が動きやすく、痛みを低減させ、より快適に治療を行うことができます。
歯磨きがしやすく、衛生的
従来の装置では、ブラケットとワイヤーをとめるためにゴムや細いワイヤーを使っていたため、汚れがつきやすく、歯磨きがしづらかったですが、セルフライゲーションブラケット装置では、ゴムや細いワイヤーを使用していないため、汚れがつきにくく、清掃性が良いため、衛生的にも優れた矯正装置です。
抜歯は必要か否か?
セルフライゲーションブラケット装置の力を歯に与えると、歯と歯の周辺組織も動きます。そして、舌や口腔周囲の筋肉からの力を受けて、歯列は側方へと自然に拡大します。これによって歯が並ぶためのスペースを確保できれば、健康な歯を抜かずに歯並びを整えられるケースがあります。
※ただし、すべての患者さんが抜歯をせず治療できるわけではありません。
通院回数・調整時間の負担が軽減できる
セルフライゲーションブラケット装置は、長期間にわたって持続的な矯正力と効果を発揮するため、個人差はありますが、従来の装置に比べて来院頻度を少なくすることができる傾向です。
来院時の調整では、クリップを開け閉めするだけでワイヤーをとめたり外したりすることが可能なため、一度の調整時間を短くすることができます。個人差はありますが、治療期間は従来と比べ短くなる傾向にあります。
セルフライゲーションブラケット装置のデメリット
・ブラケットに結紮用のシャッターやクリップがついているため、やや厚みがあり、人によっては違和感を感じることがある
・従来の矯正装置と比べると料金が割高である
矯正装置は日進月歩で進化しています。
当院では新しい知識や技術を取り入れながら、今後もより快適で安心できる治療を提供してまいります。