乳歯から永久歯に生え変わる段階で歯並びについてご来院された際に埋伏過剰歯であることがわかった例をご紹介します。
(過去のブログ「埋伏歯の症例」はこちら▶ https://www.yorozu-ortho.com/column/maihukushi2/)
過剰歯というのは、わかりやすく言うと、本来必要な数以上に歯の本数があるという状態です。「余分な歯」であるだけなら良いのですが、問題となるのは、歯並びに影響する場合や永久歯がずっと生えてこないというような場合です。
今回、初診時のパノラマX線写真を確認したところ、通常の本数よりも多い歯が上顎の右側に埋伏していることがわかりました。
通常は、乳歯の下に1本の永久歯1本が存在するのが正しい状態です。しかし今回の場合は、乳歯の下に複数本の歯が存在していることがわかります。横から見るとよくわかるのですが、歯茎の部分から複数本の歯が見えている状態でした。また、かみ合わせにも影響を及ぼしているため、歯がすり減ってしまっていました。
【初診時の歯並び】
横から見ると歯茎から歯がでていることがわかります
【初診時のかみ合わせ】
かみ合わせが不十分なため、余分な力が入りやすく歯がすり減ってしまっています
まず最初の治療としては、歯並びに影響を与えている右側の過剰埋伏歯を抜歯することからはじめました。抜歯は口腔外科で実施しました。
また「含歯性嚢胞」と呼ばれる嚢胞も存在していたので、それも含めて摘出しています。
【4ヶ月後】
過剰埋伏歯がなくなったあとは、永久歯が生えやすいスペースをつくるため、上顎の奥歯にホールディングアーチと呼ばれる装置を装着し、奥歯が動かないように固定します。
【8ヶ月後】
【8ヶ月後の歯並び】
乳歯から永久歯に生え変わった状態
【8ヶ月後のかみ合わせ】
上顎の奥歯にホールディングアーチを装着
【2年半後の歯並び】
【 2年半後のかみ合わせ】
初診から約4年後、永久歯がきれいに配列しました。永久歯がきれいに配列され、親御さんもご本人もとても喜ばれていました。
治療前はあどけなかった表情のお子さんの表情が、中学生になり身長も伸び、凛々しい表情で歯を見せて笑っている学生生活を過ごしていると思うと、親心に似た嬉しさがあります。特に小さい時期から関わるお子さん矯正治療は、本人の強い意思も大切になるため、感慨深いものがあります。
【4年後の歯並び】
【4年後のかみ合わせ】
「含歯性嚢胞」と呼ばれる嚢胞も存在していたので、抜歯とともに摘出したため、正常よりも歯の本数が1本少ない状態で配列しました。
今回の症例のような子どもの埋伏過剰歯は、将来の歯並びだけでなく、かみ合わせや顎の成長にも関係します。
お子さんの成長にともない、本人が歯磨きをするようになると、親御さんがお子さんの歯並びを意識してみないと異変に気づかないことがあります。ぜひ定期的に「口の中をチェックしてみよう!」と声掛けをして、歯並びだけでなくお口の中の様子も見てあげて下さい。
歯が欠けていたり、歯の大きさ、色の変化、痛みはないか?などお子さんの小さな異変に早めに気づき、適切な治療を行うことが大切だと考えています。
お子さんの歯並びは親御さんの協力も必要不可欠といっても過言ではありません。
今回のような埋伏過剰歯も、正しい治療を早期に行えば、永久歯の段階できれいな歯並びを手に入れることができます。
気になることは、早めにご相談ください。
●主訴
乳歯から永久歯に生え変わる段階で上下のガタガタの歯並びが気になる。
●診断名あるいは主な症状
上顎・下顎叢生
埋伏を伴う過剰歯
●年齢
8歳7ヶ月
●治療に用いた主な装置
セルフライゲーション型セラミックブラケット装置(デーモンクリア)
●抜歯部位
右側上顎の過剰埋伏歯を抜歯
●治療期間
約4年
●メンテナンス頻度
月1回
●治療費用(税抜)
約800,000円(2020年8月時点)
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について(改訂)
日本矯正歯科専門医機関の規定により、当院では矯正治療を行う上で、リスクや副作用を明示しています。
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いですが個人差があります。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性がありますが、その場合には改めて治療期間のスケジュール作成等をいたします。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響することがあります。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。程度によっては、虫歯治療を優先します。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。その場合には装置の変更等を行います。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。保定装置とは>>
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。