顔が歪んでみえる原因は口元の歪みであることがあります。
矯正治療においては、ただ歯並びを整えるだけでなく、お顔全体のバランスも考えた治療が必要不可欠です。
顔の正中線の位置を確認し、目、口元のバランスを考慮した上で、ズレや歪みの原因を検証し、かみ合わせを考慮した矯正治療を行います。

今回は左に顎が歪んで見える受け口の症例をご紹介します。

受け口でお悩みの方に多く見られるのは、歯の正中線(歯の中心のライン)のずれです。

歯の中心がずれることを「正中不一致(せいちゅうふいっち)」と言います。
実際にこの症例の正中線を見てみると、上の歯と下の歯の位置が大きくずれていることがわかると思います。

あごのずれや噛み合わせのずれを放置すると、骨格のバランスが崩れることにつながり、頭痛や肩こりの原因につながることがあります。

余談ですが、スポーツ選手で矯正治療をされる方が多いのは、このかみ合わせがパフォーマンスと関係しているからです。スポーツをする上で必要不可欠なボディバランスによる柔軟性アップのほかにも、瞬発力や力を入れる時に正しいかみ合わせが関係しています。(…オリンピック選手の歯並びに、ついつい目がいってしまうのは職業病ですね)

さて、本題です。

矯正治療においては、歯並びを整えるだけでなく、正中線の位置、骨格、かみ合わせ、お顔全体のバランス、横から見たバランスなど総合的な診断のもとで行うことが必要不可欠です。受け口の治療では、症例によっては、外科的な処置が伴うこともありますが、今回はセルフライゲーション型セラミックブラケット装置(デーモンクリア)によって非抜歯で正しい歯並びを獲得することができました。

今回は、歯並びのずれが骨格バランスと関係していることがお分かりいただけるよう、レントゲン写真を掲載致します。

受け口の正中線

骨格バランスの変化

 

●主訴
かみ合わせたときに、下の顎の位置が本来あるべき位置からずれている状態(※)で顎が左に歪んで見える。
※下顎が左に偏位した下顎前突(受け口)

●診断名あるいは主な症状
下顎前突

●年齢
16歳0ヶ月

●治療に用いた主な装置
セルフライゲーション型セラミックブラケット装置(デーモンクリア)

●抜歯部位
非抜歯

●治療期間
2年

●メンテナンス頻度
月1回

●治療費用(税抜)
約800,000円(2020年7月時点)

●治療を行う上での注意点(リスク・副作用)

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について(改訂)

日本矯正歯科専門医機関の規定により、当院では矯正治療を行う上で、リスクや副作用を明示しています。

  1. 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いですが個人差があります。
  2. 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性がありますが、その場合には改めて治療期間のスケジュール作成等をいたします。
  3. 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響することがあります。
  4. 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。程度によっては、虫歯治療を優先します。
  5. 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
  6. ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
  7. ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
  8. 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。その場合には装置の変更等を行います。
  9. 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
  10. 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
  11. 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
  12. 矯正装置を誤飲する可能性があります。
  13. 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
  14. 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。保定装置とは>>
  15. 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
  16. あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
  17. 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
  18. 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。