矮小歯(わいしょうし)があり見た目がすきっ歯でガタガタとした歯並びに見えてしまっていた症例をご紹介します。
矮小歯とは解剖学的な平均サイズよりも異常に小さい歯のことを言います。乳歯から永久歯に生え変わったのに歯の大きさが小さいという場合は矮小歯かもしれません。前から2番めの歯に出現する可能性が高く、形は、長細いものや本来の形をそのまま縮小したような形など、さまざまで個人差があります。また奥歯が矮小歯というケースもあり、気づかない人もいるほどです。また、矮小歯は歯が小さいことで、隙間ができてすきっ歯になってしまったり、噛み合わせや歯並びが悪くなったりといった影響がみられます。
今回の症例では以下画像の○で囲んだ2箇所(左右側切歯)が矮小歯でした。
初回時の写真です。
矮小歯があると歯が小さいため隙間ができてしまい、すきっ歯になります。隙間があることで他の歯が動き歯並びが悪くなる原因にも繋がります。
今回は矮小歯に加え、左上の犬歯が埋伏歯(骨や歯茎の中に歯が入ったまま出られない状態)であることも、パノラマ写真でわかりました。
【矯正治療中の経過】
矮小歯の配列を整える前にまずは、左上の犬歯が埋伏状態でしたので、歯肉を切開し、歯の表面を露出させました。その露出した歯に矯正器具を装着し、良好な位置まで引っ張り出すように動かします。
治療経過写真を比較してみると、埋伏していた歯がまっすぐ生えてきていることがおわかりいただけるかと思います。
埋伏歯が露出したあと、正しい歯列になるように、全体をセルフライゲーション型セラミックブラケット装置(デーモンクリア)で配列していきました。
矮小歯に対しては、歯の大きさが均等に見えるよう歯科治療に使用されるレジンというプラスチックを用い、大きさを整えました。歯が小さいというだけでは、歯並びに対してあまり大きな影響はありませんが、他の永久歯より小さいため、強度が低く、弱いという点には注意が必要です。そのためレジンによって大きさだけでなく強度も補足しました。
矮小歯の大きさを整えたことで、歯どうしの隙間が無くなり、正しいかみ合わせになり、今まで隙間があったため、食事の際、噛み切る時に苦労していたことも、改善されました。
埋伏歯は歯茎や骨に埋もれた状態のままですと、他の歯を押してしまい、歯並びが悪くなる原因になる場合がありますが、レントゲンを撮影しないと、歯の生え方や位置関係を正しく把握することが難しく正しい対処が遅くなってしまうことがあります。
歯並びだけでなく、歯の形や大きさ、歯の本数に対しても、現状をしっかり本人が知っていただくとで、問題点の早期発見と最適な早期治療へとつながります。
●主訴
他の歯と比べて小さい歯(矮小歯)があり、全体的にガタガタで隙間がある歯並びが気になる。
●診断名あるいは主な症状
上顎矮小歯
上顎埋伏歯
●年齢
11歳11ヶ月
●治療に用いた主な装置
セルフライゲーション型セラミックブラケット装置(デーモンクリア)
●抜歯部位
非抜歯
●治療期間
2年3ヶ月
●メンテナンス頻度
月1回
●治療費用(税抜)
約800,000円(2017年6月時点)
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について(改訂)
日本矯正歯科専門医機関の規定により、当院では矯正治療を行う上で、リスクや副作用を明示しています。
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いですが個人差があります。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性がありますが、その場合には改めて治療期間のスケジュール作成等をいたします。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響することがあります。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。程度によっては、虫歯治療を優先します。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。その場合には装置の変更等を行います。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。保定装置とは>>
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。